ドイツとベルリンは、ソ連と米英仏の共同占領の下におかれ、冷戦が進むにつれ、東西ドイツと東西ベルリンに二重に分割される。それにたいして日本は、原爆の威力によってアメリカが日本占領の主導権を握った。日本人が冷戦を身近に感じるのは、朝鮮戦争がきっかけであった。その朝鮮戦争も、文字通り対岸の火であり、むしろ特需景気が経済成長の呼び水として歓迎された。やがて、東西両陣営で従属化された中小の国々はかえって自立性を主張し、さらには冷戦の中立勢力や第三世界のさまざまな勢力が、「尻尾が犬を振る」という現象を起こしたが、日本は、アメリカに自立の気配を見せることもなかった。そのため、冷戦の意識が薄く、冷戦は終わったという意識も薄い。それが国民の政治意識と政府の内外政策にいかに反映しているのか、日本の読者に問いかけられている。